『回れる家事動線と可変大空間のある子育て世代マンションリノベーション』完成写真と設計ポイント(神戸市灘区)

2021年の6月にマンションリノベーション工事が始まり途中、コロナの影響により
材料が滞ってしまい、工期の延長等ありましたが、10月の下旬に無事にお引渡しを
させて頂く事が出来ました。

そして、竣工写真の編集を夜な夜なちまこまと進め、先日やっとこさ当所のホームページ
にアップロードする事が出来ました。

 

今後の生活スタイルの変化を許容出来るように”5枚の引き込み戸”や”置き家具”を計画し、
ワンルーム空間をベースとしたプランニングをしています。

画像だけではなく、図面等も交えて設計のポイントを解説していこうと思います。

■60㎡弱に4人家族で住まう

・生活スタイル(空間の使い方)の変化をイメージ

マンションリノベーションのお悩みあるあるの一つとも言えるのが”個室の確保”の問題。
将来どうなるか分からないから「個室を確保しておきたい」というご要望をよく聞きますが、
床面積が限られている場合はそれがなかなか難しい事が多いわけで・・・

いるかいらないか、いるにしても”いついるのか”がはっきりとしない空間を確保しておくのは
床面積の浪費になってしまいます。

なので、プランニング前に今後の家族の生活スタイルの変化をイメージする事が大事。
ざっくりとですが、多いパターンが下記のような流れでしょうか。

夫婦 → 夫婦+子ども → 夫婦 → 夫婦+親 → 夫婦

また一言に”子ども”としても、一人なにか二人なのか三人なのか、男なのか女なのかで
計画の仕方も変わってきますし、教育方針によっても変わって来るので、この”夫婦+子ども”
の期間が一番ややこしいところだと思います(笑)

今回のお住まいは二人のお子さんが同性でしたので、同じ空間をシェアするように考えました。

あとさきほどの流れを見ると、一番過ごす期間が長いだろうと思われるのが”夫婦”の時間なわけです。
お住まいづくりをするタイミングや住替え等もありますが、長く住む”夫婦”がもっとも居心地良く、
楽しく過ごせる住まいを目指す事が大事だなと思うわけです。

プランニングももちろん大事ですが、こうした生活スタイルや住まう人の変化や流れを意識する事も
住まいづくりの大事な要素だなと思っています。

・空間の稼動率が高くなるように

限られた床面積の住戸の場合、その床面積の”稼動率”が住まいづくりの大きなポイントになってきます。

南側(大きな窓のある方)は居住空間になりやすいので、おのずと稼動率(滞在率)は高くなりますが、
廊下の空間は住まいにとって必要ではありますが、稼動率(滞在率)は低くなります。

脱衣室や洗面においても同じで、必要ですが、稼動率(滞在率)は低くなりますので、限られた床面積を
目一杯利用出来るようなプランニングをする事がマンションリノベーション(特に50~60㎡台)では
大切かなと思います。

「ウォークインクローゼットが欲しい」というご要望をよくお聞きしますが、床面積にゆとりがあれば
余白を設けた収納空間となって、すごく便利だと思うのですが、”ウォークインクローゼット”という響き
だけで住まいに取り入れようとすると、ただただ狭い、尚且、動線部分が無駄な空間が出来上がってしま
います。

なので、住まいには必要だけど稼動率の低い”廊下”と”ウォークインクローゼット”を組み合わせる事で
廊下の稼動率アップ(と工事費の抑制)を図るようにしています。

・収納出来る建具や間仕切りになる家具で大きな空間に小さな空間をつくる

今回の住まいでは南側のリビング空間に可変性を持たせ、リビング(就寝空間) → 夫婦寝室(小リビ
ング)と子ども空間となるような計画をしています。

まずポイントの一つ目が、壁の中に収納出来る”5枚建ての引違い戸”になります。
建具というよりも”動く壁”というニュアンスの方が近いかもしれません。

その”5枚建ての引違い戸”と二つ目のポイントとなる”間仕切りになる置き家具”を適宜
配置する事で大きな空間の中に小さな空間をつくる事が出来るようになります。

そして、また生活スタイルが変わる時には、”5枚建ての引違い戸”は壁の中に収納し、
”間仕切りになる置き家具”は壁際に寄せれば、小さな空間から大きな空間へと変わります。

こうした可変性を持たせた間取りにするには各部の寸法や高さ設定等、ある程度設計段階
から計画しておく事がコスパの良さや施工性の良さに繋がると思います。

■狭い間口と水回り空間と動線の確保

・”中央に廊下”という固定概念が水回り空間を苦しめる!?

50~60㎡台のマンション住戸の場合、よくある間取りが3DKのパターン。
南側に二部屋と住戸中央にキッチンダイニング、そして北側(共用廊下側)に一部屋設けられて
いて、その残りに浴室・洗面脱衣・トイレをぎゅっと押し込めた間取りをよく見かけます。

で、50~60㎡台の床面積だと、住戸の間口(躯体壁の芯々)は5~6mほど。
中央の廊下に1mを確保した場合、残りは4~5mとなり、廊下の両側に空間を設けるとなると
その半分の2m~2.5mの間口の空間が現れるわけです。

 

マンション建築時と現在では生活スタイルや水回り空間に求められる要素・面積が随分と変わり、
水回り空間の再構築(拡張)はマンションリノベーションのご要望の大きなポイントになり、
キッチンやパントリーとの繋がり(回遊動線)も求められる事が多いので、水回り空間の計画は
マンションリノベーションのプランニングで最も頭を悩ませる箇所の一つと言えると思います。

この住まいの場合、生活スタイルの変化を受け止められるような整形で大きな空間を確保したかった
ので、水回り空間の計画は頭を悩ませました。悩み悩み悩み、この苦しさはなんだというと、
”廊下は中央”という固定概念。廊下を戸境壁側にひょいっと寄せ、縦長になっていた水回り空間を
90度回して横長の空間にすると、洗面⇔トイレ⇔脱衣室⇔パントリー⇔キッチンが気持ちよく収まり
、回遊する家事動線(裏動線)も確保する事が出来ました。

特に洗面は洗濯物を整理整頓する家事空間としての場所でもあるので、1.5mほどの間口をなんと確保
しなきゃと思っていましたが、それも上手く取り入れる事が出来て個人的にも満足度が高く、今後の
スタンダードの一つになるような水回り空間になったと思っています。

・収納空間との繋がりも考慮する

 

・コロナによる洗面空間の変化

昨年からのコロナ禍で住まいづくりのご要望にも変化が出てきています。
テレワークにワークスペースの確保等の

 

■居心地の良さをちりばめる

・集う場所の中に籠もる場所

マンションリノベーションのお打合せで”家族みんなで過ごせる場所”というご要望をよく耳にします。
その際、大きな空間を計画する時には家族みんなの居場所というか行動もイメージしながら、大きな
空間に+αの要素を付加していきます。

この住まいでは、南側に大きな整形のLDKを計画しています。
そこに家族が集いながら、

・DIYで住まいに愛着を

魅力たっぷり!でも、まだまだ課題たくさんのDIY作業ですが、今回も提案をさせて頂き、
”キッチンと洗面のタイル貼り”と”杉フローリングのオスモ塗装”をDIYで行いました。

 

・無垢材は無垢材らしく

ふと木の、無垢材の良さってなんだろう?っと考えた時、それは木目だったり手触りだったり
が無垢材の良さだと思っていたんですが、近くの材木屋さんに入り浸るようになってからは、
自然な形(樹形)という要素が”無垢材”という素材の良さの一つなんじゃないかなと思ったわけです。

もちろん適材適所なわけで、その他の素材や要素の少ない玄関やトイレでは、その”自然な形”が
空間を柔らかな印象を与えてくれるように思うようになってきました。

環境の変化か、はたまた年齢によるものか(笑)は分かりませんが、シンプルな設えの中にも
もう少し”無垢材らしさ”を感じられる使い方をしていきなと思います。

 

ふう~設計のポイントというか、、、私自身の振り返りっちゅーか、答え合わせというか(汗)
工事中の様子もブログで細々と残していますので、マンションリノベーションをご検討中の方
はそちらもぜひぜひご覧くださいませ。